更新日:04/19/2023
[Salesforceコラム]
この記事を書いた人
JSOL認定プロフェッショナル(ITアーキテクト)、ITストラテジスト
Salesforce認定テクニカルアーキテクト(CTA)、16x Salesforce 認定資格
飯田 博記
技術リーダーとして、Salesforce導入プロジェクト、活用・定着化支援案件に参画。システム基盤領域の経験を軸に、顧客業務から基盤までわかるアーキテクトを目指す。
Salesforce Architect Groupの共同リーダーとしてコミュニティエコシステムでも活動中。
JSOL飯田です。かねてより、Salesforce 認定テクニカルアーキテクト(CTA)を目指すと社内・社外に宣言して活動しておりました。このたび、合格基準を満たすことができ、CTAに認定されましたのでご報告いたします。
CTA取得者は、グローバルでは400人以上、国内では19人目となります(セールスフォース・ジャパン発表の認定資格保持企業一覧による)。本記事では、CTAとはどのような資格か、どのようなジャーニーを経て認定に至ったのかについて、ご紹介していきます。
Salesforce 認定テクニカルアーキテクト(CTA)とは、世界共通の資格であり、Salesforceの開発者・アーキテクト系資格の最高峰資格に位置付けられています。Salesforceの特性を熟知し、最適なシステム構築ができる多角的な技術知識とソリューションスキルを持つ技術者を認定する資格です。
一般的な選択式の試験とは異なり、審査員チームの前で行う仮想シナリオのプレゼンテーション、およびディスカッションによるレビューボード試験を経て認定されます。
私がCTAを目指すきっかけとなったのは、ある案件でご一緒したCTAの方との出会いです。その案件では複雑なシステムの実装方法を検討する必要があったのですが、Salesforceで実装すべきか・Salesforce外で実装すべきかの識別、Salesforceを利用するうえでの制限・制約、実際に実装する技術など、CTAの方の知見は秀でておりました。一緒に案件に取り組んだことをきっかけに、私もCTAの方に尊敬と憧れを感じておりました。ひとことでいうと、すごい人たち、です。
私も、どんな案件でも多様な知見を元に、案件をリードできる技術者でありたい。そのような思いから、CTA取得を目指すことにしました。
では、Salesforce 認定テクニカルアーキテクト(CTA)になるには、どのような条件・ステップが必要なのでしょうか?認定テクニカルアーキテクトに至るまでの道筋は、Salesforceアーキテクトジャーニーとして体系化されています。
大前提として、Salesforceについての理解が必要です。開発者・アーキテクト系の資格ではありますが、SFA・商談管理のSales Cloud、カスタマーサポートのService Cloud、そして外部のステークホルダーと連携するExperience Cloudを中心に、Salesforceが想定する業務のユースケース、Salesforceが提供する標準機能についての理解が求められます。
次に、標準機能では要件が満たせない場合に対応するため、Salesforce Platformにおける開発技術は必須と言えます。その上で、アプリケーション領域(データ、共有)・システム領域(システム連携、ID管理、開発ライフサイクル)の各専門分野の知識が求められます。各専門分野の知識を有していることは、5つのアーキテクト資格で証明します。
これらの前提条件を揃えることで、はじめて認定テクニカルアーキテクト レビューボード試験の受験資格が得られます。
レビューボード試験の形式は、多岐選択式の試験とは大きく異なっています。限られた時間のなかで、10ページほどの仮想シナリオをもとにその場でソリューションを構成し、審査員の前でプレゼン・QA対応をするものです。一問一答の回答では十分ではなく、本質的な理解が確認されるものと感じています。
私がレビューボード試験を受験するにあたって重要だと感じたのは、「知ること」「備えること」「マインドを持つこと」の3点です。
1.知ること
まずは立ち向かう試験と自分とのギャップを知ることがスタートとなります。どのような資格試験でも同じことが言えますが、CTAレビューボード試験にも受験ガイドが提供されています。
受験ガイドには、試験が期待する人物像、問われる技術領域、試験形式について記載されています。受験ガイドの内容を正しく理解することが第一ステップとなります。
次に、自分自身の到達状況を知ることです。受験ガイドの技術領域と自分自身のスキルを照らしあわせることで、足りない領域が明確になります。
2.備えること
Salesforceについての知識を持っておくことは当然として、試験の形式に備えることも必要です。試験当日は仮想シナリオに基づくソリューション作成、プレゼンテーション、QAディスカッションで評価がなされます。それぞれ時間が限られており、率直に言って迷っている余裕がありません。
要件を自分なりに理解し、ソリューションとして表現して、ジャッジ(審査員)の方に自身の考えを伝えることが求められます。 基本的には普段のプロジェクトでの提案や、顧客説明で行っていることと変わりません。
3.マインドを持つこと
準備を続けていくと、段々と自分のスタイルが出来てきます。しかしながら、要件に対する一問一答のソリューション提示や、準備したテンプレートに沿った作図では、合格には届かないと考えています。
同じような状況でも、重視する要件や制限・制約事項の違いにより、構築するソリューションが異なることはあり得ます。なぜそのソリューションを選択したのか、を正しく表明する「justification – 正当性を示すこと」が求められます。
日頃からjustificationを意識して、なぜこのソリューションが妥当なのかを考え続けることが大事です。Salesforceの機能も常にアップデートし続けるため、自身の知識も継続して更新しなければなりません。
レビューボード受験において「justification – 正当性を示す」には、自身の考えを持つことが重要です。では、自身の考えを持つためにはどうすればよいのでしょうか。私は、このシリーズでもお伝えした、Salesforceの仕組み・本質を理解する視点が助けになると考えています。
10年以上前、私はスクラッチアプリケーション開発に携わっており、Oracleデータベースの物理設計やパフォーマンスチューニングを担当することが多くありました。当時の先輩は詳細にこだわる方で、データファイルの内部の実装、オプティマイザ(データベースへの問合せを最適化する仕組み)の動き、トレースファイルの読み方といった基礎的なことを学びました。
その後、仮想化の時代を経てクラウドの時代となり、データベースに関連する技術も抽象化したため、ハードウェアに近いレイヤを設計することは少なくなりました。しかし、基本的な仕組みを理解していることは、Salesforceに携わる今になっても活きていると実感しています。
Salesforceのデータアーキテクトの分野では、データモデルやLDV(Large Data Volume、大量データ対策)についての知見が必ず問われます。これらは、レビューボード受験の採点項目です。データベースの基本的な仕組み・仕掛けがイメージできると、LDVのリスクや対策についても、真実味をもってプレゼンテーションできると振り返っています。
JSOLに入社して20数年、多岐にわたる事業分野、幅広い工程、コーポレートICTからビジネスICTまで広く経験できたことが、今回のCTA認定という成果にもつながったと考えています。
私自身のCTA取得というひとつの目標に到達することができました。今後は「CTAの飯田」として内外からの期待も責任も感じており、継続してスキルを磨いてまいります。
また、自身のスキルだけでなく、アーキテクトの育成も重要な施策と考えています。アーキテクトの必要スキルとして問われたアプリケーション領域・システム領域の知識、そして本質志向の視点は、実際のプロジェクトでも重要となるためです。
JSOLでは、Salesforceの資格体系に沿って各分野の技術者を継続して育成しており、延べ170名(2023年2月1日時点)の認定資格者が在籍しています。さらにSalesforce人財の育成に努め、Salesforceの活用を通じて、今後もより多くのお客さまのニーズに応えていきます。
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