更新日:03/28/2023
[Salesforceコラム]
この記事を書いた人
JSOL認定プロフェッショナル(ITアーキテクト)、ITストラテジスト
Salesforce認定テクニカルアーキテクト(CTA)、16x Salesforce 認定資格
飯田 博記
技術リーダーとして、Salesforce導入プロジェクト、活用・定着化支援案件に参画。システム基盤領域の経験を軸に、顧客業務から基盤までわかるアーキテクトを目指す。共著に「アプリケーションの安定稼動を実現する システム基盤の統合ノウハウ」(日経BP)
当サイトでは、私たちJSOLの提供するSalesforceソリューションやお客様への導入事例をご紹介しています。
このたび、JSOLでSalesforceの導入・活用支援に携わるエンジニアの目線での気づきをコラムの形で発信することにいたしました。Salesforceをはじめクラウドサービスの利用にあたって、私たちがどのようなことを考えているか、どのようなことを留意すべきか、をお伝えします。
今回は飯田が担当いたします。JSOLではプロフェッショナル職に認定され、ITアーキテクトとして活動しています。変化の時代に、状況に対応する・応用が利くためには、「本質」を理解していることが助けになります。2022年7月には国内最大規模のエンジニアネットワークを持つ「TECH PLAY」にて、「顧客ビジネスを前進させる本質志向のアーキテクチャ視点とは」と題して講演いたしました。
本稿では、「本質志向のアーキテクチャ視点」をテーマに、普段アーキテクトとして考えることを紹介します。
企業の置かれている状況について、経済産業省より発表されている「DXレポート」を参照します。「DXレポート(2018)」では、「将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変するデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性」が提示されました。
DXレポートは2018年9月の初版発表以降継続して更新され、発信されるメッセージが軌道修正されています。2022年7月に発表された「DXレポート2.2」では「企業に向けての具体的な3つのアクション」が提示されました(経済産業省, 2022, DXレポート2.2, https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/covid-19_dgc/pdf/002_05_00.pdf)。
そのひとつに、「デジタルを、省力化・効率化ではなく、収益向上にこそ活用すべきであること」とされています。DXレポートの発出により企業のDXへの取り組みは進んだものの、省力化・業務効率化にとどまるものが多く、本来取り組むべき「将来の成長、競争力強化」のためのものにはなっていないのではないか、と思料します。
「デジタルは収益向上にこそ活用すべき」は、システム構築・導入に私たちが大事にすることとも方向性があっています。例として、「営業日報管理のシステム化」を題材に、ビジネスの成長に伴う要件の変遷とシステム化のステップをケーススタディとしてみてみましょう。
とある企業で、今まで紙で管理していた営業報告(日報)の効率化・品質向上を目的にSalesforceを導入することになりました。(※ 営業日報管理 であれば、専用のサービスも提供されています。ここではわかりやすさのために要求事項の例として取り上げました。)
現行の業務では紙で運用していますので、「作成に手間がかかる」「作成したものが読めない・集計できない」「作成したものが上司・同僚にタイムリーに共有できない」などの課題が思い当たります。
SalesforceはSFA/CRM領域のSaaSですので、営業現場の情報共有は得意分野です。あらかじめ「ユーザー(社員の情報)」、「取引先(会社の情報)」、「取引先責任者(お客様担当者の情報)」を管理する仕組みが提供されています。営業報告(日報)は、業務にあわせて管理したい項目があります。この場合、「カスタムオブジェクト」として設定する方法が用意されています。
標準機能と一部のカスタマイズによって実現することができそうです。
構築した営業日報管理システムは順調に利用され、定着化が進みました。ビジネスの成長に伴って、システムへの要求も当初より拡大し・変化したようです。
クラウドサービス(Salesforce)ではこれらの要件に対応できる機能が標準機能として提供されています。
(※ この例はいずれも、経験と業務理解・想像力があれば早期に気づけるものでした。クラウドサービスを活用することで俊敏性が期待できることを示すための、わかりやすさのための例とご理解ください。)
Salesforceは、アプリケーションに必要な標準的な機能が提供されているのももちろん素晴らしい点ですが、それだけではありません。ここで今一度考えたいのは、お客様が本当に実現したかったのは「営業報告の共有」なのかということです。いくら日報を共有したからといって、それがお客様の「ビジネスの成功」に繋がっていなければ意味がありません。分かりやすく言えば、「売上・利益」です。KPIを可視化し、現場と共有することで、データに基づいた行動ができる。それを提案すべきではないでしょうか。
ここまで、Salesforceではあらかじめ標準的な機能が提供されており、標準機能の活用によって俊敏性をもってソリューション提供できることを示しました。
DXレポート2.2に立ち戻りますと、「省力化・効率化ではなく、収益向上にこそ活用すべき」どのアクションが提示されました。「収益向上」のための活用とは、具体的にはどうすればよいのでしょうか。
その企業のビジネスにおいて、特長的なところ・他社に比べて秀でたところがあれば、それは収益向上が期待できるポイントではないかと考えます。そして、他社に比べて秀でたところ、すなわち他社と異なるところですので、標準機能では不足することがあるかもしれません。
Salesforceでは「カスタマイズ開発・コーディング」により機能拡張するポイントが提供されています。提供される部品を組み合わせて、不足する部分はコーディングにより開発して、システムに必要な機能を提供することができます。
ここで重要となるのが標準機能を利用するか・開発するかの見極めの視点です。
開発することで自社のビジネスにあわせて自由度高く機能を実装することができます。そのためには開発するための技術・体制・期間・費用が必要となります。また、開発したとしても実現が難しい・リスクを伴う要件もあるはずで、見極めていく力が求められます。
基本的には標準機能をベースとして、迅速に品質高く構築する。企業のコア・コンピタンスに相当する部分は開発をしてでも実現する。開発にあたってはリスクを識別し、ほんとうに必要とされる部分を開発する。
これにはプロフェッショナルの視点が必要です。これにはわかりやすいガイドはなく、私たちエンジニアも日々意識して研鑽を続けることで、お客様の期待に応えられるプロフェッショナルを目指しています。
ITコンサルティングからシステム構築・アウトソーシングまで一貫した最適なソリューションを提案するJSOLでは、3つの視点を大切に考えています。
1つ目は、「仕組み・本質を知る視点」。営業やカスタマサービス、マーケティングなどあらゆる部署・ニーズに対応する機能を持つため、導入してみたものの自社にどう適応させたら良いか分からない、なかなか浸透していかないという企業も多いのではないでしょうか。機能・情報量が多いために自社最適化が進まず、結局効果実感が得られないという課題を抱える企業は多数存在します。
Salesforceから提供される多様な機能の中から、顧客が求める機能、そして顧客がビジネスを成功させるために必要な機能を提案するためには、まず仕組みを理解していることが必要です。
また設計・開発時には問題ないと思っていたにもかかわらず、テスト・導入後に思ったようなパフォーマンスが得られない場合、その原因を突き止めて改善するためには、Salesforceの機能や仕組み、本質を理解していなければ、本質的な解決には至りません。
2つ目は、「全体を俯瞰する視点」。標準機能が充足しないものは開発できる一方で、あまりに開発箇所を増やしてしまうと、サービスの特長であるスピードや品質を享受できないともいえます。機能が組み合わさった全体のバランスにも目を向け、本当に必要なものを見極めて開発することが求められます。
3つ目は、「顧客ビジネスの成功を目指す視点」。日報のケーススタディでもご説明したように、「システムを作る」だけでなく、「システムで何を成すか」が重要です。顧客、さらに顧客の顧客に目線を上げる。顧客ビジネスの成功を実現するためのシステム開発を意識しています。
SaaSを利用したシステム開発は、スピード感や生産性の高さが着目されがちですが、収益向上を実現するためには幅広い視点と知識、スキルが求められます。単純なシステム要件をこなすのではなく、3つの視点を持った本質志向の提案を行うことが、今のアーキテクトに求められている仕事ではないでしょうか。
私たちは要件を鵜呑みにするのではなく、なぜ必要なのか、という顧客との対話コミュニケーションを重ねることを意識しています。丁寧に進めていくことで、最終的な解決策にお客様自身が気づいたり、結果的に生産性の高いシステム開発を実現したりできると感じています。
JSOLでは、仕組み・本質を知る視点・全体を俯瞰する視点・顧客ビジネスの成功を目指す視点を大切にし、プロフェッショナルなアーキテクトを有したチームが、実用的かつ効果的なSalesforce活用を実施していきます。業種や企業特性に合わせた機能提供を実現していきますので、まずは気軽にご相談ください。
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